これこそストレスの解決策か?Part 2

これこそストレスの解決策か?Part 2
(The Independent 記事)

それでは一体、多くの異なった領域で活用できるようにみえる、このハートマスとは何なのでしょうか? そして、それはどのような働きによるものなのでしょうか?

ハートマスとは、およそ10年前に、青い空のカリフォルニア人のグループが、心拍変動(HRV)を測定する医療機器が、人間の成果向上のための効果的なツールとしての活用法を発見したことに始まります。それらの機器は、もともと、子宮内の赤ん坊や、心臓発作を起こした人の生存率を予測するために病院で使われていたものです。

レディング近郊のウォーキンハムに事務所をかまえる人材マネジメント会社、ハンターケイン社の責任者であるクリス・サウィッチによると、

「つい最近まで、英国におけるハートマス・プログラムは、企業領域においてがほとんどでした。我が社は、英国石油(BP)やユニリバーなどの多国籍企業において8000人以上の経営幹部や管理職をハートマスでトレーニングしてきました。それらの企業では、経営幹部が、プレッシャーのなかで、より効率的に、そして、より創造性豊かに、考えることができるようになるために、ハートマスが役に立つと考えたからです」

パニックや不安を感じたりしているとき、また、間に合わせることができない締め切りに直面したりしているときに、エムウェーブのセンサーで感知されるデータは不規則で一貫性がありません。パターン表示において認識できる山や谷がないのです。

そんなとき、規則的な呼吸をおこないながら、肯定的な感情に集中すると、そのパターン表示において認識できるリズムが生まれるのです。理想的には、少し傾いた「くい垣」のようになります。

現在、ハンターケイン社で働くクライブ・ハイランドは、つい最近までIT企業のCEO(最高経営責任者)でした。

「モニターに読み出されたそのデータだけが不規則なのではありません。実際、ストレスが溜まっているときには、私たち人間は、効率的に、また創造的に、機能しないものなのです。私は事業を行っているときに、そのようなことを何度となく見てきました。経営トップにいる人間たちも、ストレス状況下では、視野の狭い、機械的な行動しかできなくなるのです」

このように瞬間的に閉じられる機能は、トラブルからの脱出に、全てのエネルギーを注げるように作用する本能的で、神経的な反応なのです。

残念ながら、企業幹部や生徒たちにとって、瞬間的に閉じられてしまう機能のひとつが、計画・記憶・創造性を発揮することに関わっている脳の一部分<大脳皮質>なのです。

ハイランドによると、「私たちは<生存モード>に入ると、自分の知っていることだけを繰り返すものなのです。明晰に考えることが難しくなったり、記憶を失ったりします」

ストレスを抱えた経営幹部からの報告によると、状況が厳しくなったときでも、ハートマスは、精神活動が凍りつくことを防ぐ方法を与えてくれたそうです。

これらの説明は、ハートマスによって、より良く眠れるようになった、人間関係などで傷つくことが少なくなった、ゴルフのスイングが改善した、というような証言と合致します。しかし、ハートマスがどうしてそれだけの効果を生み出すのかについて、十分に説明しているとは思えません。どうして私たちは穏やかな気持ちになるのでしょうか?呼吸と幸福感の間にはどのようなリンクがあるのでしょうか?そして、より調和のとれた心臓リズムを持つということは、どのような意味を持つのでしょうか?

サウィッチによると、「心理状態を変容させるのに、呼吸や瞑想を活用するというのは、宗教的にも長い伝統です。英国医学雑誌に2-3年前に掲載された研究からも、アベマリアのような宗教的真言を朗読するときには、血圧は下がり、呼吸リズムは一定化することがわかっています。それは同時に、自律神経の2系統、つまり、活性のための交感神経と、弛緩のための副交感神経のバランスに影響を与えるのです。この2系統が切り替わる過程は心臓で行われており、これが心拍変動(HRV)として知られているのです」

試験や締め切りの場面で、もしくは、試合に勝利するための最終パットの瞬間に、脳内で最も早く反応する部位は、感情を司っており、扁桃体と呼ばれています。扁桃体は、「警戒しろ!警戒しろ!」と解釈される曖昧なメッセージを送り出します。さらにこれが、副腎という腎臓の上部にある小さな臓器へ向けたメッセージを誘引し、アドレナリンというホルモンと、また別のコルチゾールというストレスホルモンの分泌の引き金を引くのです。これらの全ての生体活動は交感神経によって制御されていて、その結果として、私たちがストレスとして感じる、胃の痙攣、心臓ドキドキ、呼吸困難などが起こるのです。これらの全ては、人類だけでなく他の生物が、素早く、そして、それほど考えることなく、危険に対処できるようにデザインされた古代の生体システムの一部なのです。

詠唱や呼吸がもたらすのは、副交感神経の役割を、このようなケースで上手く働かせることです。エムウェーブのセンサーが実際に測定し、画面に表示しているのは、心拍変動(HRV)です。これは、どれだけ効率的に心臓が活性と弛緩を「切り替えているか」の目安となります。規則的でリズミカルな切り替えが健康的であり、その状態が画面上では「くい垣」のように現れるのです。「くい垣」が高いと、「大きい心拍変動」です。

医師たちが注意しているのが、「小さい心拍変動」です。というのは、これは2つの自律神経系のうち、どちらか一方のみが正常に働いていることになり、それは不健康の証です。例えば、もしあなたが心臓発作で倒れ、小さい心拍変動しかないと、生き残る可能性はずっと少なくなります。

サウィッチが言うには、

「もし私が経営会議の席で、みんなで聖歌を歌うことを提案したら、恐らく笑いものになり、建物から追い出されてしまいます。しかし、呼吸のしかたを変え、さらに強い肯定感情に組み合わせることを依頼し、そして特に、それが即座に心拍活動に与える影響をパソコン画面で観測できるときには、経営幹部も非常に興味を持ってくれるのです」

<part3に続く・・・>

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