コヒーレンス法(心臓呼吸)とは?
コヒーレンス法
コヒーレンス法(心臓呼吸)は、15年以上にわたるストレス研究に基づき、ハートマス研究所が推奨しているメンタルトレーニング法の1つです。
コヒーレンス法は、科学的な実験によって効果が検証されていること、簡単であること、短時間で習得できることなどから、企業、病院、学校、スポーツ分野などで幅広く使われています。
コヒーレンス法は、科学的な実験を重ねることで生み出され、効果が実証された、短時間でより理想的なコヒーレンス状態を作り出すためのメンタルトレーニング法です。
コヒーレンス法(心臓呼吸)の目的
ストレス状態(不安・緊張・いらいら)に陥ったとき、「冷静に」「落ち着いて」「前向きに」考えることで、その状態から抜け出そうと試みることがあります。ストレス状態が軽微であれば、ストレス状態から簡単に脱出できることもありますが、ストレス状態が深刻なほど、そんなに簡単には脱出できません。
これには理由があったのです。
ストレッサーを感知すると、脳の視床下部という部位からの信号によって、自律神経系(交感神経と副交感神経の交互作用)に影響を及ぼし、心拍リズムが乱れます。
実は、この乱れた心拍リズムが、脳の認知機能に影響を及ぼし、落ち着いて考えることを阻害するのです。
反対に、心拍リズムが安定していれば、 脳は十分に機能するようになります。
コヒーレンス法の目的は、ストレス状態に陥ったときに、まずは心拍リズムを安定させることで、この乱れた心拍リズムによる脳への悪影響を取り除き、集中して考える(前向きに考える)ことを可能にすることなのです。心拍リズムをコヒーレンス状態(一貫性・調和)にすることが、ストレスから脱出するための第1歩なのです。
入学試験、スポーツ競技、結婚式でのスピーチなど、私たちは緊張状態などに陥ったとき、深呼吸をすることで、経験的に少し緊張状態を緩和させることを知っています。実は、深呼吸は心拍リズムを安定させる効果があるのです。
コヒーレンス法は、科学的な実験を重ねることで生み出され、効果が実証された、より理想的なコヒーレンス状態を作り出すためのメンタルトレーニング法です。
コヒーレンス法の手順
<第1段階>
まずはゆったりと椅子に腰掛けましょう。また、慣れれば、立ったままででもコヒーレンス法は実践できます。
ストレスから気持ちを切り離すために、心臓周辺に意識を向けます。この時、心臓の鼓動を意識しないようにしましょう。
<第2段階>
心臓周辺に空気の通り道があることを イメージしながら、4秒くらいの間隔で、ゆっくりと深呼吸をします。最初のうちは 上手にできなくても気にする必要はありません。練習を重ねるうちに、自然と心臓呼吸はできるようになります。あまり深く考えずに、スムーズに呼吸することだけ意識してください。
<第3段階>
心臓呼吸を1-3分程度続けたあとに、左図のような肯定的な感情を想起してください。あなたの周りにいる人たち(家族・友人など)を思い浮かべて、その人たちへの「感謝」「いたわり」「愛情」などの気持ちを感じることができる状況などを思い起こして下さい。
なかなかこのような感情を想起することができない人は、右図のように、自分が一番落ち着ける風景や趣味などを想起することから始めてください。
<注意点>
スタンフォード大学名誉教授らによる科学的な実験によって、「感謝」「いたわり」「共感」などの感情を想起することが、最もコヒーレンスに近づくことがわかっていますが、具体的に何がベストなのかは、個々人によって異なります。リアルタイムでコヒーレンスグラフを確認し、あなたにとって最適な対象を探すことができるフリーズズレーマーを活用しましょう。
肯定的な感情であれば、基本的にOKですが、ギャンブルで勝ったときなどの一時的快感は好ましくありません。
理想的な練習回数は、朝・昼・晩の1日3回ですが、週に3日だけやるのではなく、1日1回でも毎日続けることが理想的です。また、慣れてくれば、通勤途中の電車でもできるようになります。
コヒーレンス法の効果
コヒーレンス法を実践すると、心拍リズムが安定します。心拍リズム(自律神経)は、ホルモンや免疫の働きと強く相関しているので、心拍リズムが安定すると、体全体のバランスが良くなるのです。『心拍リズムの安定は、体内のホルモンとエネルギーの安定をもたらす。もし、これと同様の効果の期待できる薬があれば、それは100年に1度の大発明に匹敵する』と指摘する専門家もいます。
また、最近の脳研究によって、脳の機能は、心拍リズムやホルモンのバランスによって影響を受けることがわかってきました。つまり、コヒーレンス法を習得すれば、心拍リズムを理想的な状態にすることができるだけでなく、脳の機能、つまり集中力や思考力を高めることができるようになります。
ところで、コヒーレンス法がその他多くのストレス解消法と異なる点は、コヒーレンス法を習得すると、ストレスを感じた「その瞬間」にストレス反応をコントロールできるようになることなのです。イラストを見ながらその仕組みを説明します。
エムウェーブを活用しながら、コヒーレンス法を継続的に練習します。1回5分、1日2-3回が目安です。コヒーレンス法の練習中、脳の中では次のようなことが起こっています。
例えば、いつもあなたを怒鳴り散らす上司などのことを考えると、「嫌だ・辛い」という気持ちが起こります。これは、あなたの脳内に、「上司=嫌だ」という神経回路が出来上がっているからです。これは過去の体験から徐々に時間をかけて作られたものです。
コヒーレンス法を続けると、脳内に少しずつ、「上司=大丈夫・なんとかなる」という神経回路ができてきます。「上司=嫌だ」という神経回路は、時間をかけて作られたものであるのと同様に、新しい神経回路も短期間では出来上がりません。
地道にコヒーレンス法を続けていくと、この「上司=大丈夫・なんとかなる」という神経回路が少しずつ太くなり、いつしか新しい神経回路ができあがります。この期間的な目安としては2-3週間ですが、「上司=嫌だ」という元の回路の強さなどによって異なります。
新しい神経回路が出来上がると、「瞬間的に」ストレスを解消することが可能になります。
新しい神経回路が出来たとしても、新たにストレッサーを体験したり、過去のストレッサーを思い出したりすると、「嫌だ・辛い」という感情が呼び戻されます。これは避けられません。しかし、そんなストレスな「瞬間」に、いつもコヒーレンス法でやっているように、心臓を少し意識すると、「嫌だ・辛い」という感情が起きたとしても、「瞬間的」に新しい神経回路にアクセスすることができるようになるのです。 普段から心臓を意識したコヒーレンス法を行っていたことで、「心臓の意識」が、「大丈夫・なんとかなる」という新しい神経回路への短時間でのアクセスを可能にするのです。
お酒を飲んだり、マッサージなどを受けたりすると確かにリラックスできますが、職場や学校で、ストレスを受けた「その瞬間」にマッサージを受けることはできません。継続的にコヒーレンス法を実践し、ストレスはコントロールできるという神経回路が出来上がると、上司に怒鳴られる、試験や試合前で緊張を感じた「その瞬間」に、その神経回路にアクセスし、短時間で感情をコントロールできるようになるということなのです。これがコヒーレンス法の最大のメリットです。
タイトルにあった、『気持ちを切り替える「スイッチ」は心臓にある』というのは、このことだったのです。
フランス式「うつ」「ストレス」完全撃退法
ピッツバーグ大学病院代替医療センターの精神科医・教授であるシュレベール博士は、フランスで最も人気のある精神科医です。
1990年代には「国境なき医師団」に参加し、湾岸戦争後のクルディスタン、インド、サラエボ、コソボなどを訪れる。2003年、「Guerir(治癒)」を出版、全世界でベストセラーに。『フランス式「うつ」「ストレス」完全撃退法』はその日本語版です。
シュレベール博士は、大学病院での臨床経験から、薬物や精神分析に頼らずに、心身問題を解決するための7つの方法を推奨しています。
ハートマスが開発したフリーズフレーマー(エムウェーブPC)とコヒーレンス法は、そのうちの1つであり、『フランス式「うつ」「ストレス」完全撃退法』という彼の著作においても紹介されました。