10年単位で経済の大きな流れを予測し、アメリカで10年毎に出版されベストセラーとなっている「メガトレンド」シリーズの最新版「メガトレンド2010 - 新しい資本主義をつくる7つのトレンド」(パトリシア・アバディーン=著、経沢香保子=監訳)が、翻訳出版されました。
この本の数ヶ所にわたってエムウェーブとハートマスに関しての著述がありますので、それを紹介したいと思います。
『肉体、頭脳、精神の複雑な関係を単純化するハートマス』
『メガトレンド2010』(ゴマブックス) 275-277ページより抜粋
愛情、勇気、喜びが、科学的に測定できて、それを従業員の活力と生産性に関連づけることができたらどうでしょう?フォーチュン500社(*1)は、日々のビジネスに、この最先端の技術を利用しようとチャンスに飛びつくのではないでしょうか?
答え。彼らはすでにそうしています。ハートマスという画期的な技術のおかげで、ヒューレット・パッカード、BP、シスコ、ボーイング、モトローラ、リズクレイボーン、を含む100を超える企業が、リーダーシップ、営業、顧客サービスといった分野で生産性を向上させることに成功しているのです。ハートマスのインナー・クオリティ・マネジメント・プログラムは、『ハーバード・ビジネス・レビュー』で特集を組まれました。
どんな効果があるのでしょうか?肉体、頭脳、精神の複雑な関係を単純化するのです。心臓の鼓動がスムーズでリズミカルなとき、人の思考と行動はより良いものになるのです。
具体的に言うと、ハートマスは、パソコンで心拍リズムが測れる技術を開発しました。そうして、ストレス、マイナス思考、感情の圧迫が、いかに鼓動に影響を及ぼし、観測グラフを激しく波打たせるか、実際に目で見られるようにしたのです。
一方、希望を与える価値観(愛情や喜び)と結びついているプラス思考といった感情は、激しくぶれるグラフの線を、規則正しい線に落ち着かせます。科学的には血圧を下げることと関係がある、そうしたより調和のとれたリズムが、不整脈を減らし、よって生産性が高まるわけです。ハートマスの役目は、どうやって心臓の鼓動を観察し、バランスを保つかということを人に学ばせることです。そして、それこそが知性、活力、高い能力のカギとなるのです。
1998年以来、ハートマスは目覚しい成果を挙げてきました。
■フォーチュン50社(*1)に選ばれている、あるテクノロジー企業の顧客サービス部は、ストレスを50%減らし、顧客への対応を33%向上させました。
■ある医薬品企業は、離職率が50%減少、顧客の満足度が27%上昇、2年間で150万ドル(1億6500万円)節約し、全国的な社員満足度調査で第一位になりました。
■経営幹部の75%が、業績、回復力、健康状態、リーダーシップにおいて劇的な向上を体験しています。
こうした結果の裏にあるものは何でしょう?
ハートマスは「心臓の情報」をうまく利用しています。それは、賢明で直感的な情報源で、ハートマスが言うように、「人を混乱から明快な状態へと向上させる」ことができ、満足感を高められるのです。ハートマスの取締役副社長ハワード・マーティンは言います。「心臓は身体システムと健康全般における中枢タワーなのです。」
(*1)「フォーチュンxxx」のフォーチュンとは、経済専門誌Fotune誌が選ぶ株式市場の指標となるような大企業、優良企業の総称。日本で言うところの「日経225」。
【補足】
過去の「メガトレンド」シリーズでは、産業社会から情報社会・IT社会への変化こそが、メガトレンドだと予見しているが、2010年までの経済を占う本書では、「意識主義(Conscious Capitalism)」とも呼べる新しい資本主義の台頭を予見しています。
筆者は、この意識主義がアメリカで生まれたのは、エンロン事件以降の、経営者の金銭へのどん欲さに対して、消費者が「ノー」をつきつけ始めたからだとしているようです。
そして、会社経営は、今後、株主だけでなく、従業員・顧客を含めた関係者全員が満足できるような「周りを意識した」ものであるべきで、その意味で、環境や従業員満足などの社会的責任を重視した経営を行っている企業やメソッドが紹介されています。
実際に、従業員満足を生み出す方法として、精神性・メンタルを鍛えるプログラムを会社が提供し、成果をあげている事例などの例として、エムウェーブとハートマスメソッドは、瞑想、ヨガ、祈りなどと共に、この本で紹介されたのです。
アメリカでも先端企業が始めている取り組みですが、日本企業も今後、このような「従業員満足」と「成果」の両方を生み出すトレーニングに注目するところが少しずつ増えてくるでしょう。ほとんどの企業が、この両方は同時に達成できるということに、まだ懐疑的なようです。