心臓病医はどのようにしてハートマスに「はまった」のか?

2006年、アメリカでハートマスに関する書籍が発売されました。タイトルは『ハートマス式「高血圧の改善法」 高血圧を低下させる実証された自然なアプローチ』。

この本では一冊丸ごと、心臓病医が心臓発作などを引き起こす大きな要因である「高血圧」を改善するために、ハートマス(フリーズフレーマーやエムウェーブを含んだメソッド体系)を推薦し、その科学的な裏づけから、実際のストレス解消テクニック、事例などを紹介しています。

著者であるブルース・ウィルソン医学博士は、ピッツバーグ大学病院心臓病学研究所長、コロンビア病院(ウィスコンシン州)の心臓外科部長と医学教育部長などを歴任した後、現在は、地元ウィスコンシン医学大学で助教授(臨床医学)を務めています。

1997年からハートマスの医学領域における活動を支援していますが、この著書の中に、ウィルソン氏がどのようにハートマスに「はまった」のかについてのくだりがあり、とても興味深かったのでそれを紹介したいと思います。

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私が初めてハートマスを知ったのは1997年のことでした。当時、私は心臓病を抱える患者のためのストレス軽減法を探していました。多くの医学研究から、ストレスと心臓疾患、特に、高血圧や冠動脈疾患の関わりについては、多くの証拠が積み上げられていたのです。心臓発作は、アメリカや多くの先進国の間では、他のどんな病気よりも死をもたらすことがわかっていました。

また、心臓疾患を抱える患者がストレスを軽減することが、病気の再発(心臓発作、再入院、再手術、死亡など)の可能性を少なくすることも、医学研究から分かりかけていたのです。

(中略)

心臓病医として、私は心臓病の危険因子を緩和するような教育を受けていました。投薬によって、高血圧を抑制したり、血中コレステロールをレベルを下げたり、禁煙を促したり、血糖値を下げるための食事法を教えたりすることは得意でした。しかし、私が解決できなかった苛立ちは、ストレスというものが「黒いカーテン」の裏側にあって、誰もそれを測定できないということだったのです。そして、ストレスを軽減した人間が得られる利益はどれくらいで、どのような仕組みによるものなのかを知ることも難しかったのです。

ある日、極めて偶然でしたが、私の世界が変わりました。私が勤務していた病院の同僚が、『ナチュラルヘルスマガジン』誌を手に、私にこう尋ねたのです。「心臓病医として、あなたはこの記事にあるハートマスについて何か知っていますか?」。私が知らないと答えたところ、彼はその雑誌を貸してくれたので、翌週に予定していた会議までに、ちょっと調べて返答すると答えたのです。

私はその日のうちにその記事を読みました。4つの段落の終わりには、長い間ばらばらだったパズルが明らかにまとまっていく感覚が芽生えていました。私たちが生来保有するストレス反応と、その健康、パフォーマンス、知覚、幸福感といったものに及ぼす生理的影響について、長年関心を持って取り組んでいたドック・チルドリという男によって創設されたハートマス研究所について、その雑誌で初めて知ったのでした。その記事は私を強くひきつけました。ハートマス研究所への連絡をすぐに決断しました。(そしてハートマスに電話したところ)ハートマス研究所が定期的に開催していた3日間のワークショップへの参加を促されたのです。

3週間後、私は心拍変動(HRV)といわれるものに関する多くの研究記事を抱えて、飛行機に飛び乗りました。HRVこそ、ハートマスの研究者が心臓と神経系の内的協働を覗きこむための「窓」として活用していた手法だったからです。

およそ20名の参加者が到着すると、夕食が用意されました。夕食のあと、それまで数千名がハートマスメソッドを学んだ研修室に通され、研究責任者であるロリン・マククラティーが、研究所内での研究結果だけでなく、世界中の実験室で行われたHRVに関する調査結果を整理したスライドで、1時間にわたり、ハートマスメソッドと科学的背景を説明をしてくれました。

もしかしたら、私が心臓病医だったからかもしれません。もしくは、私は単にそういう人間だったからかもしれません。しかし、ハートマスの発見の美しさとそのシンプルさに私はとても魅了されたのです。そのあとの3日間で、異なった感情状態において、また、様々な脅威(リアルなもの、想像によるもの)に向き合ったときに、私たちの身体がどのような内的コミュニケーションをするのかについての科学や方法といったものを学びました。

ストレス反応の生理学についても学びました。ストレス状況下で、なぜ私たちは短絡的な行動をとりがちなのか、また、ストレス反応が短期的・長期的に、どのような影響を私たちの健康に及ぼすのかについて学んだのです。

滑稽なのは、国内有数の医学研究所で教育を受けてきた心臓病医(私)が、そこで学んだことのほとんどを知らなかったことでした。せめてもの救いは、私だけでなく、そこに参加していたほかの人たちも、ほとんど何も知らなかったことです。しかし、それが研究調査というものです。研究調査とは、新しいことを学び、玉ねぎの皮をめくったときに、その下にあるものが何であるのかを知るまで、私たちは間違っているかもしれないということを気がつかせてくれるものなのです。

ハートマスの研究の根底にあるものは、かなり文学的な意味での「心臓の力」に関するものへの理解でした。あなたが学んできたように、私も心臓は単なる血液を送り出すための「ポンプ」であると学んできました。しかし、ハートマスのワークショップでは、数千以上の神経細胞によって構成される心臓独自の「小さな脳」が、どのようにして脳に対して影響力のある情報を送り出すのかについて学んだのです。

ハートマスの研究チームは、この発見を導き出して以降、心臓が送り出す情報を測定したり、人々がストレス反応をコントロールするためのテクニックを考案したのです。過度のストレス反応は健康にとって大きな害をもたらします。そして、数百万人もの人たちが、身体システムにもたらすネガティブなストレスの影響によって、早死にしているのです。

このワークショップで教えられている内容は、カリフォルニア沿岸の「赤い森」と呼ばれる地にある片田舎(*1)に限定されるべきではなく、ヘルスケア全般に応用されるべきだと思いました。そして、私はすぐに、心臓病患者がストレス反応を改善するための科学的に整理され、測定でき、効果的な方法を探すために動き出したのです。

私は、勤務していた病院の心臓リハビリプログラムに、ハートマスメソッドを取り込めないか、ハートマスのスタッフに相談しました。また近年、病院そのものが、医療規則、問題を抱えた慢性疾患患者、厄介な家族、殺人的なスケジュール(道理をわきまえない医師についてはいうまでもありません)など、とてもストレスフルな職場となりつつあり、ハートマスメソッドを看護師やその他の職員が学ぶことによって、職場のストレスに上手く対処できるようになり、その結果、患者に対してより良いケアができるようになるのではと考えました。

正直にお話しすると、私がミルウォーキーに戻り、病院内で心臓リハビリの試験的プログラムに着手しようとしたところ、病院経営者からは、カリフォルニアで「変な毒」を注入されたと揶揄されました。それでも私は心臓リハビリのプログラム開発に取り組んでいました。

転機は、心臓リハビリ学会での私の講演を聞いた看護師、ダイアン・ボールの興味を引いたことで訪れました。ダイアンの勤務していたデルノー病院(イリノイ州)での結果は本当に素晴らしいもので、すぐに他の病院での取組が始まったのです。ハートマス研究所のヘルスケア部門はこうしてはじまったのでした。私はそれ以来、ハートマスの科学とメソッド教育のための研修の講師として活動しているのです。

“The HeartMath Approach to Managing Hypertension. The Proven, Natural Way to Lower Your Blood Pressure”からの抜粋

 

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