ADHDの子供たちへの介入実験結果

ADHDの10歳から12歳の子供たちを対象にした、エムウェーブを活用したコヒーレンス法の介入効果に関する「二重ブラインド」「統制群あり」の実験研究に関する速報が入ったので報告します。

この実験は、ハートマスのイギリスにおける提携先であるハンターケーン社が、プレシントン工科大学とリサーチ専門機関CDR社と共同で行ったものです。

このプロジェクトの全体が完了するのは2006年の夏を予定しており、実験研究の全体結果は、今秋以降に明らかにされる予定です。

<方法>

100名の子供たちは、専門機関を通して募集され、ADHD診断のためのコナーズ尺度による測定の結果で選抜されました。

100名の子供たちは、認知機能と心肺機能のベースライン測定のあと、2つのグループに振り分けられました。

実験群の子供たちは、学習支援アシスタントと、個別に、毎日15分、エムウェーブのゲームを使ったトレーニングを行いました。

統制群の子供たちは、学習支援アシスタントと、個別に、毎日15分、レゴブロックを使って自由に遊戯しました。レゴブロックの活用は、社会適応度を向上させる治療的方法であると、「自閉症と発達障害」誌に報告されています。

6週間後、全ての子供たちは、再度、認知機能と心肺機能を行いました。さらに、それぞれの子供たちの学校教師が、「長所/短所テスト」、「教師によるコナーズ尺度簡易版」によって、子供たちの評価を行いました。

統制群の子供たちは、6週間後、実験群の子供たちと同様に、エムウェーブによるトレーニングを受けました。

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<結果>

リサーチと評価測定を担当したCDR社のコメント

■ 統制群との比較において、実験群の子供たちは、文字の認識力が有意に改善した(p<0.02%)。

■ 改善の程度も大きく、統制群は3.1%に対して、実験群は50.8%であった。

■ 統計的に有意ではなかったものの、実験群の子供たちは、文字を正しく認識する時間が早くなった。これは、正確さのために、時間が犠牲にされたのではないことを示している。

■ まだ分析の初期段階にあるが、結果は一貫しており、子供たちの記憶能力の向上を示唆している。

■ 先行研究からも、コヒーレンス法は、健常者の長期記憶を改善することが明らかにされており、これまで判明している範囲の本研究の成果と一致している。

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<参加者と関係者のコメント抜粋>

■ アンドリュー 11歳
コヒーレンス法をすると、幸せな気分になれる。本当に元気づけてくれるんだ。もし悲しくなっても、それをすれば、直ぐに幸せな気分になれる。以前は泣きたくなるようなときも、今では泣いたりしないよ。

■ アンドリューの母
アンドリューは、家で行動が大きく変わりました。彼を寝かせることは、いつも大問題でした。自分では決してベッドに入ろうとはしませんでした。疲れて倒れるまで起きていたのです。今では、彼は自らCDを使って眠りにつこうとしています。アンドリュ-はいつも、短気で、そう簡単には「ダメ」という言葉を受け入れませんでした。今では、彼はよりなだらかになったように見えます。そして、私たちの家庭生活もずっと楽になりました。

■ アンドリューの英語教師
アンドリューは教室で、周りの生徒とより上手くやれるようになったように思えます。彼は、友達との関係に苦しんでいたように見えたし、かなり不安定な関係にありました。しかし、彼は今では、より努力をして、結果として、他の生徒たちも彼をすすんで一緒に座るようになったのです。クラス内をうろうろすることが少なくなり、内面も落ちついているように見えます。アンドリューは難しい子供で、それは変わらないと思っていました。しかし、コヒーレンス法は、アンドリューが自分では気がつかないうちに、彼を変えてしまったように思えるのです。

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■ ダニー 11歳
コヒーレンス法が大好きだよ。これまでよりも喧嘩をしなくなった。

■ ダニーの母
最近よくあるのですが、私が家で動揺したりすると、ダニーが私にコヒーレンス法を実践するように促がしてくれるようになりました。彼は近くに座って、私の呼吸のために、5秒間を数え、そして、楽しいことを思い浮かべるようにと言うのです。
彼に関していえば、コヒーレンス法は、無限に役に立っています。過去、彼は学校で非常に攻撃的でした。今年に入っても、いつもトラブルを巻き起こし、同級生を噛んで、停学になりました。ところが先日、喧嘩に巻き込まれそうになったけど立ち去ったと、家に帰ってきたときに話してくれたのです。ストレスを抱えているときにも、あまり激さなくなっています。

■ ダニーのスペイン語教師
ダニーはあまり興奮しなくなりました。以前は教室でキリキリ声を上げたり、奇妙な音を立てては楽しんでいました。しかし今では、それはめっきり減ったのです。思うに、ダニーは自分の変化に気がついていないかもしれません。というのも、その変化は微妙だからです。しかし、彼はより落ちついているし、教室でもよりゆったりしているように見えます。

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■ ジェシカ 12歳
コヒーレンス法は良いわ。幸せな気持ちにしてくれる。

■ ジェシカの母
弟に対する彼女の攻撃性が大きく落ちつきました。弟を攻撃するのではなく、自分自身を衝突から離れるようにコントロールするようになりました。彼女の睡眠パターンは変化し、ずっと早く眠るようになりました。

■ ジェシカの英語教師
ジャシカはコヒーレンス法を始めてから授業でもずっと良くなりました。彼女の注意力と集中力は、両方ともずっと良くなったのです。授業の最中にずっとおしゃべりをすることは少なくなり、質問を向けられると、よりきちんと答えるようになりました。

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■ トム 13歳
コヒーレンス法は最高だ。

■ トムの母親
トムはよりバランスの取れた感情のサインを示すようになり、フラストレーションがたまった時にも、以前のように攻撃的にならなくなりました。家でも怒りが少なくなっているので、弟や妹とも上手くやっています。彼は以前、急にカッとなったり、人を責めたりすることがかなり頻繁にあったのですが、ここしばらくは、そのような彼を見なくなりました。

■ トムのサポートアシスタント
彼は今日の英語の授業をとてもよくやっていました。トムはすぐに落ちついて、ほとんど私の手助けを必要としませんでした。彼は全ての宿題をすぐに仕上げ、私にもっと宿題を出すように求めたのです。こんなことはトムについては非常に稀で、いつもは私の支援が必要で、宿題に向かわせるのに苦労していたのです。今日は本当に彼を誇りに思いました。

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【補足】
日本ではほとんど知られていませんが、ADD/ADHDやLDを抱える発達障害児に対する介入方法として、アメリカやヨーロッパでは、「バイオフィードバック療法」で実績を挙げている専門家が増えています。

また、専門誌でも、ADHDに対するバイオフィードバック療法の効果検討に関する研究論文も増えています。

バイオフィードバック療法とは、特別の機器やセンサーを利用して、心拍活動や脳波など生体情報をリアルタイムで確認することにより、心身をよりよい状態に自己コントロールすることを習得する方法です。

一昔前は、小難しい数値やグラフなどによる情報のフィードバックが主体でしたが、最近では、子供でも簡単に楽しみながら使うことができるシステムが開発され、多くの小児科医やカウンセラーだけでなく、障害児を抱える保護者が活用しています。

エムウェーブのようなバイオフィードバック機器は、自己コントロール法を習得するための支援ツールです。

自己コントロール法は、色々ありますが、その1つが、ハートマスが開発したコヒーレンス法なのです。短時間で効果的にできるので、ADHDの子供たちには、とても実践的なメソッドといえます。
http://www.mental-technology.jp/guide1.html

発達障害に詳しい専門家に助けをえながら行うのが望ましいですが、今回の実験のように、1日15分間、ADHDの子供たちにエムウェーブを使うように導くことができれば、子供たちの行動変容が期待できるでしょう。

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