国内導入例 看護教員

国内専門家のエムウェーブPC活用例
~ 看護教育の一貫として活用する看護学校教員からの報告

筆者は成人看護学を専門とし看護基礎教育に携わっている。

成人看護学のなかでも糖尿病や高血圧症などの慢性病を持つ人の看護を専門としているが,慢性病を持つ人々の多くがストレス状況にあり,出口なしと言った心境の毎日を送っている場合も多いと指摘されている.

また,看護基礎教育についてみると看護学の基盤形成として組み立てられているとはいえ,学生にとっては過密なカリキュラムやことに臨地実習は時に大きなストレスであり,ライセンス取得のための国家試験受験も大きなストレスのひとつといえる.

これらから患者に対するストレスケアの必要性と同時に学生自身のストレスマネジメントの必要性を感じていた.

また,看護学教育の在り方に関する検討会報告書「大学における看護実践能力の育成の充実に向けて」(平成14年)で初めて看護基礎教育におけるコア・カリキュラムが示され,その項目にリラクセーションが置かれた.しかし当時は,学生にリラクセーションを教える方法を持たなかった.

個人的な体験

筆者が体調不良を経験したなかで西洋近代医学の限界を感じたことが大きい.体調を回復させる過程で西洋近代医学とは異なる種々のケアに巡り会った.そのひとつは東洋医学である.

東洋医学のパラダイムは全体論的で西洋近代医学とは異なるものであった.しかし患者として医師の指示に従うという部分は基本的に同様で,自らが行うという積極的方法の必要性も感じていた.

結果としてとしてヨガ,ピラティス,ストレスケアなどを行い,これらはいずれも心理的な安定のみならず体調調整と維持に大いに役立った.そのようなときにエムウェーブPCの紹介を受けた.

エムウェーブPCの有効性

エムウェーブPCは動画面を通じてリアルタイムでリラクセーション状態をフィードバックできるところが興味深く,それを他者によらず自分で行うことができ,かつトレーニング可能であるところに新規性を感じた.

エムウェーブPCを用いることによりリラクセーション体験を言語化し伝達可能であると考えた.ようやく成人看護学でのリラクセーション演習を具体的に構築することが可能となった.

リラクセーション演習の実際

看護学科2年生後学期に実施した.

12名のグループにつき90分で,操作説明,デモンストレーションの後,エムウェーブPCによるリラクセーションと筋肉応用覚醒伸展法(ホメオストレッチ)による脊柱起立筋のリラクセーションを行った.演習室内にはアロマオイルをたき、ヒーリング音楽を流し,リラクセーションを促進するように環境を設定した.

学生のレポートのほとんどが,演習の効果を示す内容であった.以下に記述の一部を紹介する.

・呼吸法など日常生活に簡単に取り入れられるものに想像以上の効果があることに驚いた

・呼吸法も意図的タッチもそれほど難しくないので自分で行えると思った

・健康な人々にとってもリラクセーションでストレッサーに対応できる状態を作ることは大切だと思った

・演習を振り返って自分でリラックスできる状態を作り出してみようと思った

・姿勢や呼吸を整えると身体はリラックスした状態になることがわかった

・はじめストレス状態が高くてもリラクセーション法を取り入れることで徐々にリラックス状態になり心拍も落ち着いた

・リラックス状態は主観的なもので人によって異なるものだと思っていたが,呼吸法では全員がリラックス状態となった

・正しい座り方,身体の姿勢をとり,自然な深呼吸をすることでとてもリラックスでき,すっきりした

・呼吸法を変えるだけでリラクセーション状態に,これほどなれるのだと驚いた

・呼吸法を変えるだけで明らかに心拍の波が一定になった

・ただリラックスしてくださいと言われてもできないが,深呼吸をしたり,自分が好きなもの,落ち着くものをイメージしたり,心臓に手を当てて,心臓から血液が出ているイメージをすることでリラックスできた

・5秒毎の呼吸することで呼吸が整えられ,リラックスしやすくなると知った

・呼吸法は必要な道具がなく,方法も簡単なので誰でも行うことができる手軽なリラクセーションだと思った

・はじめは100%ストレスフルな状態であったのに,姿勢を良くして呼吸法を用いることによって,リラックス状態へと移行していった

・実際にリラックスできているのかを数値や色で判断できて,効果を目で確かめることができた

・姿勢をきちんとして呼吸を整えると不思議と力が抜ける感じがした

・学生の記述から,演習により学生自身のリラクセーションに対する理解を深めることができ,リラクセーション法として学ぶことができたと考える.この背景には,学生自らがリラクセーション状態を体験することができたこと,エムウェーブPCによってリラクセーション状態を可視化して確認できたことの効果が大きいと思われる.

その他のケース

演習以外にも国家試験対策として3名の学生にエムウェーブPCを用いた.

演習と同様に呼吸を整え,心臓を中心として肯定感情を抱くことを伝え,リラクセーション状態を確認しつつ個人指導を行った.毎日定期的に,就寝前などに行うこと,また,不安を感じたときや集中力が低下したときに行うことなど,実施するタイミングも指導した.

3名とも予想以上に頻繁にかつ定期的に実施していたようで,落ち着くことができようになったとのことであった.このようにリラクセーションの効果を実感できたため継続できたのではないかと推察される.直接的な関連には言及できないが指導した3名とも国家試験に合格した.

今後の活用について

今後も引き続き成人看護学演習でエムウェーブPCによるリラクセーション法を実施する予定である.このほか,国家試験対策や日頃の学生に対するケア,教員自身のストレスマネジメントなど,活用範囲は広い.患者へのケアに用いることができれば,看護ケアの質を上げることができると思われるため,臨地実習での活用も検討したいと考えている.

産業医科大学産業保健学部 第二看護学講座 柴田弘子