これこそストレスの解決策か?Part 3

これこそストレスの解決策か?Part 3

ひどく緊張している時に実際に体内で起こっていること、そして、自分でコントロールできている時には、それがどのように変わるのか?このようなストレスの生理現象への注目している点が、ハートマスと、その他の似たようなテクニックとの大きな違いです。カリフォルニア州ボルダークリークにあるハートマス研究所の上席責任者であるブルース・クライアーによると、

「私たちの発見からは、イライラ・怒り・不安を感じることと、病気になることの繋がりに、心臓が深く関わっていることがわかっています。否定的感情が、疾病の可能性を高め、明晰に考えることをより難しくするといった形で、心臓の周波数を変化させるのですが、それを測定することができるのです」

これこそが、肯定的感情と呼吸を組み合わせる理由です。数年前の「アメリカ心臓病学ジャーナル」に掲載された論文によると、愛情や感謝といった感情は、私たちの心拍変動(HRV)を変化させ、よりリラックスした状態に導き(これが決定的に重要なことです)、そして、「もう大脳皮質のスイッチを切っておく必要はないよ。また考えはじめても大丈夫だよ」というメッセージを脳に送るのです。詩人たちはこれまでも愛情の源泉を心臓と考えていましたが、彼らは、科学の一歩先をいっていたのです。

ハンターケイン社のチームは、これまで数年間に渡って、役員会議に出席するような人たちが肯定感情を作り出せるように力を注いできました。しかし、ずっと下の社会的階層にいる人たちも、ストレス対処が上手なわけではありません。例えば、サウィッチが招待されたロンドン市内ランベス地区にある、他の学校が受け入れを拒否した生徒たちが通うような学校です。そこでサウィッチが経験したことが、ハートマスがどれだけ多くの人たちに役に立つのかということをはっきりと理解させました。

「校長先生は、生徒たちが飽きるまでに1時間ももたないでしょうと警告してくれましたが、3時間後も私たちはそこにいたのです。とても感激したのは、しばらくしてから、ある生徒が『すごく頭にきた。もしハートマスをしていなかったら、お前を殴っていたよ』と話していたのを聞いたときでした」

経営会議と同じようなストレスレベルに近づいている学校教室という教育現場でも、ハートマスが役に立つかもしれないという考えは、このように浮かんだのです。

その可能性にかけた学校のひとつが、ウィレル地区にあるプレシントンカトリック工科大学付属高校でした。心理療法家であり、生徒支援サービス部責任者のトニー・ロイドによると、

「昨年の初めに、まずは複数の高校3年生で試してみました。そしてそれがすごく上手くいったので、今では学習支援を必要とする問題行動のある全ての子供たちをハートマスで訓練しているのです」

不安を抱えていたというプレシントン校の女生徒は、いまではすっかりハートマスとエムウェーブの大ファンです。その当時のクラスの学級委員長だったリンドセイ・ファーロンです。

「試験は大嫌いでした。だっていつも神経質になってしまうから。だから自分自身をなんとかコントロールできるようにしたかったのです。でもレッスンは当初、とても大変のように思えました」

彼女がハートマスのテクニックを習得するのに、1日およそ20分で1ヶ月かかりましたが、彼女はハートマスの効果に驚いている。「これまで芸術の試験でA評価を得るために、いつもびくびくしていました。本当にストレスでした。でも、試験のはじまりに、HRVのテクニックを使った
ら、試験を本当に楽しむことができました。そして、私が受けたテストで最高の出来でした」

ホルト校と同様に、プレシントン校でも、ハートマスの効果を測定するために、子供たちに(介入効果を測定するための)前後試験を受けてもらっています。ロイドによると

「これまでの結果は、予想を大きく上回っています。間違いなく、問題となるような行動は減少しているのです。しかし、認知への効果に関する最終結果は、このプロジェクトの終了まで待たなくてはなりません」

この研究は、ノーザンブリア大学のキース・ウェズネス教授によって進められています。数年前、ウェズネス教授は、記憶を改善させる2つの方法に関する小規模比較実験を行いました。

片方のグループの生徒はハートマス技法を学習し、もうひとつのグループには、記憶を増強すると考えられているジンセンと銀杏のハーブの組み合わせが与えられました。ハーブを摂取したグループの記憶は、12%向上したのですが、ハートマスのグループの記憶向上は、その2倍以上になったのです。

もし現在進行中の実験が期待された結果を出したならば、私たちは、教育分野における新しい方法を目の当たりにするかもしれません。これまで伝統的に、学校では「飴と鞭」式のバリエーションに頼ってきました。最近になって、リタリンなどの薬が、特別難しい子供たちの状態を一時的に変えるために使われるようになりましたが、治療からはほど遠い状態です。

しかし、ロイドは、ハートマスがもっとずっと価値のある希望のようなものを提供してくれると信じています。

「もし簡単に教えられて、11歳の問題行動を起こしがちな少年が、学校をより楽しみ、教室でも他の生徒と上手くやれるようになるシンプルなテクニックがあるのだったら、それって素晴らしいことだと思いませんか?」

ところで、ハートマスのアプローチは、職場のストレスを研究したり、その対処法を調査したりする研究者にとってはどのように映るのでしょうか?チェルシー&ウェストミンスター病院の産業医療部のコンサルタントでもあるヤードリー・ジョーンズ医師は、

「ハートマスやエムウェーブの背後にある科学は、非常に興味をそそられるものです。肯定感情が私たちの機能を高め、さらに長生きできるようにするという証拠は山のようにあります。そして、心臓と呼吸をシンクロさせることが、気分だけでなく、あなたがどれだけ上手に決断を下せるかに与える影響があることも明らかなのです」

<part4に続く・・・>

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